地方の廃校に新たな価値nap village(環境デザイン)

岡山県加賀郡吉備中央町

1,000坪の森の中に村のように点在する新旧建物。奥の廃校は工房に。
建物も、自然環境も、コミュニティもトータルにデザインしました。

■Project data 

期間:2012年3月完成
対象:空間リノベーション
発注者:有限会社nap
所在地:岡山県加賀郡吉備中央町上田東2395-5ほか
用途:複合施設(事務所・工房・店舗・住居・外部環境)
規模・構造:

敷地面積 3,435㎡(約1,039坪)
床面積 事務所棟 木造・平屋建・改修……….159㎡
工房併用住宅棟 木造・2階建・新築……….191㎡
カフェ棟(&thingsハチガハナ)……….61㎡
住宅棟(オーナーズ ハウス)……….119㎡

 

関連情報:
 掲載情報
・住む。No.43(農山漁村文化協会)
I’m home No.73(商店建築社)……….「個性を映し出すインテリア」に特集されています。
BRUTUS 20139/1(マガジンハウス)
・BRUTUS2018年8/15号(マガジンハウス)……….「今、人が集まる場所は再生物件。居住空間学 再生編」に特集されています。
・商店建築20142月号(商店建築社)

 関連ページ
nap village(事務所・工房) 
nap village (カフェ &thingsハチガハナ)
nap village (家)

 


※(有)住吉木材工業在籍時の作品

 

 

 

Things「こと」

“nap village”には、夢があります。そこは、岡山県吉備中央町の山中の廃校と周辺の自然環境全体を、住居・店舗・工房等の集まる「村」のような場所として蘇らせ、新しい暮らし方、働き方が実践されている複合施設です。

デザインの眼差しは、単に建物のカタチをキレイにつくるということを超えて、クライアントである (有)napが新たな事業所として自然環境豊かな土地を探していたニーズと、地域シンボルの分校跡地関係者の高齢化等の課題を結びつけ、廃校の再生していくという「物語」を生み出していくことに向けました。
さまざまなコンテクストを読み解き、未来に向かって物語を生み出すことが大きな軸となり、美しい環境や歴史それを引き立てるように新たにつくった建物郡がもつ雰囲気は、バラバラなようでいて大きな物語のもとに一貫しています。

そもそもの企業移転の動機にもあった、手狭な都市部の賃貸物件ではなく、郊外に自社保有化することで固定費の縮減に値する効果も得ています。また何よりも空間そのものがnapらしさを発信することができ、この場から生み出される手製の鞄にも物語の奥行きを感じることができ、価値を与えてくれています。
napは移転と同時に、自然から得るインスピレーションを大切にした新ブランド「ハチガハナ」の立上げやライフスタイルの提案を続けています。
「ハチガハナ」とはこの土地の字名、つまり今では使わなくなってしまった土地の呼び名ですが、まさにここを指す言葉を旗印に世界に届けるブランドを生み出しています。

また近年急速に問題になっている、廃校の扱いについても、民間に継承しながらも保存再生が行えた特異な事例となることでしょう。
物理的機能的には価値を失くしかけていた廃校は、保存することになんら義務もなかったにも関わらず残せています。
それはなぜでしょう。あえて書きませんが、しかし、私にもnapのオーナーにとっても自然な成り行きでした。

もうひとつ、インターネットでほとんどの情報が受発信できる今もなお、私がうまく伝えられないことがあります。ここの心地よさもその一つです。
最高のカメラマンに最高の一瞬を、写真に撮っていただいているので、この空間を体験した方になら、その写真に写し撮られた空気感を追体験いただけると思います。
しかし、絶えずうつりゆく自然の心地よさやその音、温度、うるおい、におい、綺麗な蝶が突如飛んでくる感じ、、、、などこの場でしか体験できないものが多いので、体験したことがない方にはこの空気感を伝えられているでしょうか?

機会があれば一度か二度訪れてみていただきたい。
しかし、注意は必要です。私たちが街なかで慣れっこになりすぎている親切すぎる看板はありません。
なぜならここ場の雰囲気を壊したくないから。
カフェは土日しか空いていないかもしれません。そういう場所だから。少しだけ、この土地や空間・空気に耳を澄まして、ひとときを想い想いのスタイルでおたのしみいただければと思います。

Space「もの」

このnap villageは、とにかく「ここちいい!」と言っていただける。
それが、この場所・このプロジェクトの最大の魅力。

話し出せば止まらないほどに、たったひとつのこの場所をつくるにも、ものをつくりあげるときというのは、その動機や目的などをクリアにしていきながら、組み立てていきます。このnap villageは、「企業のブランディング」や「地域資源の再活用」など、やや小難しく聞こえる話も多々含まれています。それら複雑な要素をよく噛み砕き、ひとつのストーリーとしてつむいでいる点が大きな特徴でもあります。

ただ、ここには、老若男女・日本人も海外の人も、幅広くいろんな方が「きもちいいですね!」と訪ねてきてくださっては、そんなことばを残していってくださっています。

私のようなデザイナーがプロセスとして頭で考えることとかすべてをすっ飛ばしてただ「ここちいい!」。そして誰がつくったかとかいう作家の存在もほぼほぼ消えてなくなっていて、この場の心地よさが印象に残るということは、私がデザインする上でとても大事にしていることのひとつです。

Future「みらい」

山奥で紡ぐnapの物語

2013年グッドデザイン賞 受賞

地域のシンボルであった分校に、
napが新しいトモシビを灯していく。

テナントでは表現できない、空間そのもので“napらしさ“を表していく
そして、その“napらしさ“を山奥から世界へ

岡山の山奥で紡がれるストーリーを
私も楽しみにしています。

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