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nap village(事務所・工房)
はじまりは一本の電話からだった。
(有)napは当時、岡山市内の賃貸ビルと倉敷市内に工房を持ち、
世界的に評価をされつつあるアパレルメーカーであった。
会社を次のステップへすすめるために、
スペースの手狭さ、工房が2カ所あることによるロス、従業員同士のコミュニケーション不足による生産性の低下に課題を感じ、解決を図ろうとしていた。
アパレル業界では、
人気が出始めたら、東京に路面店を出店することが
1つのステータスとなっていた。
しかし、(有)napのオーナーは、生まれ育った岡山にこだわるとともに、
海外の老舗アパレルメーカーの郊外でのびのびとした“ものづくり”に
自らのイメージに重ねていた。
課題の解決とのびのびとした空間でのものづくりをしたい
という想いを託された。
■Project data
期間:2012年3月完成
対象:空間リノベーション
発注者:有限会社nap
所在地:岡山県加賀郡吉備中央町上田東2395-5ほか
用途:複合施設(事務所・工房・店舗・住居・外部環境)
規模・構造:
敷地面積 3,435㎡(約1,039坪)
床面積 事務所棟 木造・平屋建・改修……….159㎡
工房併用住宅棟 木造・2階建・新築……….191㎡
カフェ棟(&thingsハチガハナ)……….61㎡
住宅棟(オーナーズ ハウス)……….119㎡
関連情報:
掲載情報
・BRUTUS 2013年9/1号(マガジンハウス)
・BRUTUS2018年8/15号(マガジンハウス)
・商店建築2014年2月号(商店建築社)
関連ページ
nap village(環境デザイン)
nap village(事務所・工房)
nap village (カフェ &thingsハチガハナ)
nap village (家)
※(有)住吉木材工業在籍時の作品
Things「こと」
まず、私は岡山県の地図を広げた。
そして、(有)napの取引先の所在や、バイヤーがどのような経路で全国からやってくるのかをマッピングした。
そこで、注目したのが児島市と岡山市郊外、そして吉備中央町であった。
土地を探すにあたって、
彼らのニーズにあう土地は、一般の不動産情報には載っているわけがなかった。
来る日も来る日も車を走らせるなかで
出会った土地のひとつに、70年前に建てられた廃校があった。
napらしい空間を考える時に
私は、napの製作したカバンを眺めていて、
一昔前のハンドメイドのものづくりのスピリッツを感じていた。
そんなnapのかばんが持つ雰囲気と、
小学校のイメージと重なってきた。
(有)napの皆さんに土地をプレゼンする日、実際に廃校を見せた。
奥さまや女性スタッフには座敷童がでそう と当時の鬱蒼とした雰囲気に嫌悪感を抱かれていたが、
私とオーナーはこの土地でプロジェクトを進めることを決めた。
この土地との出会いが、私とオーナーのイメージを固め、ひとつにしてくれた。
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Space「もの」
のびのびとしたnapのものづくり
外観はなんども手が入った痕跡を残し、
内側は、天井や床をすべて取り、粗々しい骨組みを露わにした空間をベースにリノベーションした。
職員室は事務室に
壁全面を覆うウィリアム・モリスの壁紙が際立たせるように演出した
教室はメインの工房とし、
若いスタッフが日夜、ものづくりに励み
大きなテーブルや、巻き糸の工具のサイズから逆算した棚が、窓際に立ち並ぶ
もう一つの教室は裁断室とし
コンクリートの上に、大きな機械、重量のある革などを保管する部屋とした。
廊下は、幅広さを活かし、napがつくるカバンの特徴である帆布にペンキを塗る工程を行う場所とした。
布工房については、隣接した場所に新築し、ゆったりとしたスペースを確保した。
休憩時間には学校らしくチャイムが鳴り響く
校庭を見ながらのんびり過ごす時間も この工場の楽しみのひとつである
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Future「みらい」
廃校から紡がれていく物語
季節ごとに行うサンプルセールや、得意先へのフレンズ店の売りのときには、
napのファンや地域の方が大勢ここへ足を運ぶ
かつて廃校だった、そして住民会の会長がほそぼそと維持管理と続けてくれていたこの場所を
私たちとの出会い、
そしてnapが新しい形で継承し
いぶきを吹き込むことで
新しい物語を紡いでいく